特許を申請しても、そのままの内容で認められることは稀です。審査官の指摘を受け、権利の範囲を書き直すことになるのが普通です。企業にとっては、やり取りが増えるほど費用や時間もかかります。

この研究は、2011~2013年に米国で出願された特許の審査経過を分析しています。権利の範囲を示す「請求項」の文章も使い、出願人と審査官が判断を積み重ねる過程をモデル化しました。そのモデルで、やり取りの回数を制限した場合に何が起きるかを調べています。

試算では、回数制限によって、基準を満たさない権利の登録が減りました。回数が限られると、出願人が最初から広すぎる権利を求めにくくなるなど、行動そのものが変わるためです。

一方、本来なら特許を取れる出願でも、途中で権利の取得を断念するケースが増えました。審査を早く終わらせることと、保護できる発明を取りこぼさないことは、必ずしも両立しないという結果です。

著者らは、誤って認めた権利の影響、権利を得られなかった発明の損失、審査にかかる費用をあわせて評価しています。試算では、権利取得の断念が増える分を含めても、回数制限によって社会全体の負担は減りました。

ただし、これは実際に制度を変えた後の結果ではなく、モデルによる試算です。出願人や審査官の行動について仮定が置かれ、社会全体の負担の計算も、特許を認める現在の基準が適切であることを前提としています。こうした前提が変われば、効果の見積もりも変わる可能性があります。

日本への示唆

日本への応用として、審査の迅速化を処理期間だけで評価せず、補正の経過や、出願人が権利の取得を断念した段階・理由も調べることが考えられます。企業の知財部にとっても、審査にかかる負担と、最終的に守れる権利の範囲をあわせて考える材料になります。

これは研究結果を踏まえた本解説の考察です。日本と米国では、審査や不服申立ての手続きが異なります。日本でも回数制限が有効かどうかは、国内の審査経過を使って別に確かめる必要があります。