技術力を収益につなげる方法は、自社の商品開発だけではありません。他社から研究開発を請け負うことも、その一つです。この研究は、特許の保護が強まると、こうした受託研究がどう変わるかを調べています。

著者らが利用したのは、1975~1997年の米国上場企業の研究拠点データです。自社向けの研究を行う拠点と、他社からの受託研究を行う拠点を区別し、それぞれの数がどう変化したかを追いました。

1982年、米国では特許訴訟の控訴審を扱う裁判所が一本化されました。それまでは、地域によって特許権者に有利な判断の出やすさが異なっていました。そのため、一本化によって特許を守りやすくなった度合いにも地域差が生まれました。著者らは、その変化が大きかった地域と小さかった地域で、研究拠点数の動きを比較しています。

その結果、制度変更による増加率は、受託研究の拠点で約35%、自社向け研究の拠点で約20%と推計されました。どちらも増えましたが、受託研究のほうが高い伸び率でした。なお、この数字は研究拠点数についてのもので、研究費や受託額の増加率ではありません。

受託研究では、報酬や成果の権利を契約で決めます。完成した技術を特許で守りやすくなれば、その技術から利益を得る見込みが高まり、研究を請け負う側にも収益の機会が広がります。著者らは、こうした仕組みで結果を説明しています。特許制度は、自社の発明を守るだけでなく、企業間で研究開発を分担する取引にも関わるということです。

ただし、同じ時期に地域ごとの産業構造なども変わっていれば、その影響が推計に含まれる可能性は残ります。また、対象は1997年までの米国上場企業です。現在の企業や中小企業でも同じ変化が起こるかは、この分析だけでは分かりません。

日本への示唆

日本の特許政策を評価する際にも、出願件数や研究費に加え、企業間の受託研究がどう変わったかを調べることが考えられます。特許の保護が、自社の研究を増やすだけでなく、他社の技術力を活用する取引を支えるか、という問いです。

企業にとっても、自社向けの研究と受託研究をどう組み合わせるかを考えるうえで参考になります。ただし、契約慣行や企業の構成は日米で異なります。日本でも同じ関係がみられるかは、国内の取引や研究活動のデータで確かめる必要があります。