企業が新しい技術を開発しても、その使い道を特許だけから読み取るのは難しいことがあります。商品名やロゴを守る商標の記録も使えば、技術と商品・サービスとの関係が見えてくるかもしれません。
Abbasiharoftehらの2026年の研究では、特許と商標の分類をつなぐ対応表を作成しています。特許のCPC分類は技術分野を、商標のニース分類は商品・サービスの分野を表します。分類の基準が異なるため、同じ会社の特許と商標であっても、分類を並べるだけでは両者の関係は分かりません。
そこで著者らが着目したのが、特許のタイトル・要約と、EU商標に記載された商品・サービスの説明文です。文章の意味を分析する手法で商標の分類を細かく分け、それぞれに関連する言葉が特許文書にも現れるかを調べました。こうして作られたのが、662の特許分類と616の細分化された商標分類を結ぶ対応表「PAT2TM」です。
収録された技術と商品・サービス分野の組み合わせは、41,228通りに上ります。一つの技術が複数の商品分野で使われる可能性を考慮し、それぞれの結び付きの強さを示しています。分析の目的に応じて、関係の強い組み合わせに絞って使うこともできます。
著者らは、同じ企業が近い時期に出願した特許と商標や、特許と製品を結び付けた別のデータを使い、対応表が実際の記録とどの程度合うかも確かめています。また、時期の近いデータでは似た対応関係が得られましたが、1990年代後半と2010年代後半を比べると違いもありました。技術の用途や市場の構成が変われば、対応表も更新していく必要があるのでしょう。
この対応表を使えば、企業が持つ特許の技術分野と、商標に記載された商品分野を比較できます。自社の技術を別の商品やサービスにも使えないか、検討する手がかりになりそうです。
ただし、対応表で結び付いていることだけでは、その特許が実際に商品化されたとは判断できません。また、対応表は主に英語の特許文書とEUの商品・サービスの用語に基づいており、特許データには2020年版が使われています。個別の技術がどの商品に使われたかを確かめるには、製品情報や販売実績などを別に調べる必要があります。
日本への示唆
日本企業の特許と商標を分析するうえでも、この方法は参考になります。例えば、特許出願が増えた技術分野に対応する商品分野で、新しい商標の出願も増えているかを調べれば、技術開発から商品化に向けた動きを捉えられるかもしれません。
そのためには、EUのデータから作られた対応表が、日本の商品・サービスにも当てはまるかを確かめる必要があります。日本語の指定商品・役務や類似群コード、実際の製品情報との照合が、検証の手段として考えられます。企業の知財開示と併せて見ることで、開示された技術と商品との関係を調べる手がかりにもなるでしょう。
なお、日本への応用に関する部分は、研究結果を踏まえた本解説独自の考察です。
