他社にはない技術で事業を伸ばしていても、社外の人がその価値を判断できるとは限りません。投資家にとっては、その技術が何に使われ、どれだけ利益を生むかが分からなければ、投資の判断は難しくなります。この研究は、独自技術が企業の強みになる一方、投資家による評価を難しくする面があることを調べています。

対象は、1983~2016年の米国上場企業2,694社です。各社が持つ特許の技術分野の構成を、競合企業と比べました。例えば、同じ業界でも、他社とは違う技術分野の特許を多く持つ企業を、独自性が高い企業と捉えます。これは測り方を説明するための例であり、個々の特許の優秀さを採点したものではありません。

分析では、技術の独自性が高い企業は、平均的に売上の伸びや利益率などの業績が良いという結果でした。著者らは、他社が簡単にまねできない技術を持つことが、競争上の強みになると考えています。

投資家が企業を知る手がかりの一つが、証券アナリストの分析です。アナリストは、企業の事業や業績を調べ、将来の利益の見通しなどを投資家に提供します。この研究では、技術の独自性が高い企業ほど、新たに分析対象になりにくく、いったん対象になっても分析を打ち切られやすい傾向がありました。著者らは、他社との比較が難しく、事業を評価する手間がかかるためだと解釈しています。

さらに、アナリストによる分析が少ないほど、独自技術を持つ企業では「株主が求める収益率」が高いという関係もみられました。これは、投資家が実際に高い利益を得たという意味ではありません。見通しを判断しにくい投資には、より大きな見返りがないとお金を出しにくい、という要求を表すものです。研究では、株価と将来利益の予測などから、この収益率を推計しています。企業から見ると、株式で資金を集める際に求められる見返りが高くなることを意味します。

独自技術には、もう一つの負担もみられました。他社の技術進歩から得られる恩恵が小さいのです。競合と技術の方向性が大きく違うと、他社の研究成果を自社の開発に取り込みにくくなります。独自の道を進むことで競争力を得る一方、周囲から学ぶ機会も少なくなる可能性があります。

業績に関する分析では、競合の技術構成の変化や特許の期限切れも利用して、独自性の影響を確かめています。ただし、こうした推計には前提があり、独自技術を追求すれば必ず業績が良くなるとは言えません。また、対象は特許を持つ米国の上場企業です。特許を取らずに守っているノウハウや、日本企業にも同じ結果が当てはまるかは、この研究だけでは分かりません。

日本への示唆

日本の企業実務への応用としては、知財部と、投資家への説明を担うIR部門が協力し、技術と事業のつながりを示すことが考えられます。「他社にはない技術」という紹介に加えて、どんな顧客の課題を解決し、どの商品や収益につながるのかを説明すれば、社外の人が強みを判断する手がかりになります。

ただし、この論文は、説明を改善すれば投資家の評価が上がると検証したものではありません。日米では開示の慣行やアナリストの活動も異なります。日本企業でも独自技術が評価されにくい面があるのか、説明の仕方を変えると投資家の理解が進むのかは、別途確かめる必要があります。